(イラスト:ナツコ・ムーン)
厚生労働省が発表した『若年性認知症実態調査』(令和2年)によると、日本における若年性認知症の全国推計患者数は約3.57万人。そのうち52.6%がアルツハイマー型認知症となっています。大切な人を思う気持ちは同じでも、時に理不尽さに見舞われて絆が引き裂かれそうになることも――。高島和子さん(仮名・東京都・無職・75歳)は、父親から母親の様子がおかしいと連絡を受け、両親と同居を始めましたが……。

来客がある日は、母を2階に閉じ込めて

「お母さんの様子がおかしいんだ!」

そう父からたびたび電話が入るようになったのは39年前のこと。当時、家事と子育てに追われていた私はいつも適当に聞き流していた。

しかし、ひとりっ子である私を思ってか、「お父さんも歳だし、そばで様子を見ていくことも考えよう」と夫から提案が。それから半年後、私たちは両親と同居することにした。

父はほっとした表情を見せ、家族5人のにぎやかな生活がスタートしたかに思えたが、まさか20年にもおよぶ壮絶な闘いが待ち受けているとは想像だにしなかった――。

日常は突然崩れ始める。ある日の朝、近所の美容院へ行くと言って家を出た母が、夜になっても戻らなかったのだ。警察まで出動して捜したが行方はわからず、時間だけがただ流れていく。

間もなく日付が変わろうとする頃、髪を乱して母がフラフラと帰宅した。私が泣きながら理由を尋ねると、「店が混んでいるから、散歩をして時間を潰すように」と美容院の人に言われたという。そんなことがあるだろうか。