夫は6年前、脳内出血で突然倒れて救急搬送された。一命はとりとめたものの…(写真:stock.adobe.com)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは栃木県の70代の方からのお便り。老人ホームに入居した夫から、毎日かかってくる電話。その会話の内容は――。
夫との新しい生活
1年前に特別養護老人ホームに入居した夫から、毎日2回から3回ほど電話がかかってくる。私たちは、「朝ごはんは美味しく食べた?」など、穏やかな会話を楽しむ。
夫は6年前、脳内出血で突然倒れて救急搬送された。一命はとりとめたものの、後遺症のため、病院から施設、そして自宅へと場所を移し、4年間の在宅介護がはじまった。私は必死で、無我夢中の日々だったと思う。車椅子の扱いからはじまり、着替え、オムツの交換、食事の手伝い――すべて緊張感を伴うものだった。
彼自身が一番つらかったはずだが、就寝時になると、いつも私に感謝の気持ちを伝えてくれた。「今日も僕を守ってくれてありがとう。少しずつ、できることを増やしていくから」。
高次脳機能障害もあるなか、私はリハビリの過程を見守り続けた。私が夫に宿題として課した日記も、一生懸命取り組んでくれた。最初のころは、文字が曲がったり脱字が多かったりと上手に書けず、夫もあまり気乗りしていない様子だった。
それでも私は続けてほしかったので、とにかく心をこめて褒めまくる。次第に乗り気になってきたのか、そのうち日記を書くことが夫のなかでルーティンとなり、少しずつでも綺麗に書けるようになった時は感動した。
そして1年前、私の脳腫瘍が判明し手術が決まったのを機に、在宅介護は終了。新しい形で2人の暮らしがスタートしたのだ。
住む場所は違えど、心は繋がっている。電話から聞こえてくる声を支えに、今日も明るく生きていきたい。