私と対極にある友人、八木志芳さん
そんな私と対極にあるのが、元アナウンサーでタレントの友人、八木志芳さんだ。私たちはポッドキャスト『斉藤ナミと八木志芳の欲望ラジオ』という毎週2人で30分間お喋りをする番組をやっている。
あの日は、お昼すぎに東京の上野で待ち合わせて、スタジオで2時間の収録だった。スタジオには彼女の他にも放送作家の方がいた。
人に聞かれることを前提にお喋りをすることは、黙々と文章しか書いていない私からすると、かなりの重労働だ。その上、知らない大人が横で聞いているとなると、もう緊張しっぱなし。終わる頃には脇汗がビッショビショだった。
エネルギーを出し切ってスタジオを出るともうヘロヘロだ。座りたい。駅までの道すがら「ちょっとカフェでコーヒーでも……」と志芳さんに提案しようと思ったが、彼女は
「まずい! 私、15分後には次の打ち合わせなの。じゃ、ここで。帰り、気をつけてね!」
とにこやかにメトロの闇へ吸い込まれて行った。
ええ! 15分後!? あんなに喋って出し切ったのにすぐまた別の仕事するの? 信じられない……!
すごいなあ~と仰天したのち、私は一人で駅のスタバに入り、放心状態でソイラテの氷を見つめ、1時間くらいボーッとした。
驚くことに、その夜、彼女は別のラジオの生放送でニュースを担当しており、さらには夜中に個人のSNSで音声生配信までやっていた。なんちゅう化け物なんだ……。
名古屋に帰った私は、案の定、しばらく泥のようにベッドに沈んでいた。情けない。大して働いてないうえ、あんだけスタバでゆっくりしたのに。
彼女のあの超人的な動きは決して特別な日のメニューではない。SNSを覗けば、昨日も、一昨日も、そしておそらく明日も、彼女は誰かと会い、喋り、発信し続けている。
私にとっての一生に一度のフルマラソンのような1日を、彼女は毎日軽々とこなしているのだ。
志芳さんが行動しまくって広大な地図を広げている間に、私は自分の家で停滞を続けている。その圧倒的な行動力の差を突きつけられたとき、人生のあらゆるチャンスを指をくわえて見送るということなんだと痛感する。
