トゲの活躍
物理的防御とは、トゲや硬い葉っぱなどの“装備”によって、体を守る方法です。バラやヒイラギが典型例ですね。サボテンも、このタイプの防御に全力投球してきた植物です。
サボテンのトゲは、見た目どおり強力なバリアです。2012年の研究では、オプンティア属のサボテンが密集している場所では、家畜が近寄らず、周囲の植物の多様性が高く保たれていたと報告されています。つまりサボテンは、自分だけでなく、周囲の植物コミュニティも守っているのです。
このトゲは人間の社会でもかなり重宝されてきました。有刺鉄線が発明される前、南米やメキシコではサボテンが生垣として使われていました。特に柱サボテンのような大型の種は、天然の「立ち入り禁止ライン」として大活躍していたのです。
興味深いエピソードがあります。冷戦真っ只中の1960年代初頭、キューバ政府は米軍基地への侵入を防ぐため、「サボテンの壁」を建設しました。長さ13キロ、幅3メートル。もちろん、素材はサボテンです。このサボテンの壁は、単なる物理的バリアというより、冷戦の象徴として役割を果たしました。
サボテンのトゲにはほかにも戦略が隠れています。
たとえば、ある研究では、サボテンのトゲを取り除くと茎に届く光の量が大きく増えることがわかりました。つまり、トゲはサングラスのように光を和らげる機能を持つということです。光は植物にとって欠かせないエネルギー源ですが、強すぎる光はむしろストレスになるため、トゲによって適度な量の光に調整しているのです。
さらに、日中の温度上昇を抑え、夜には逆に保温するという、まるで植物界のダウンジャケットのような役割も果たしています。砂漠の気温差は激しく、昼は灼熱、夜は冷え込みます。その極端な環境で、トゲが温度を調整する一種の断熱材になっているのです。