ヒッチハイクで旅をする植物?

トゲの活躍は防御や温度調整にとどまりません。なんと繁殖にも一役買っています。サボテンには、有性生殖(花を咲かせてタネを作る方法)と無性生殖(体の一部から新たな個体を作る方法)があります。後者では、茎の一部が落ちて地面に根づき、クローンのように増えていきます。その際、ウチワサボテンの仲間にはおもしろいトリックがあります。トゲが動物の毛や皮膚に刺さり、それにくっついて移動します。そして、別の場所でその茎が落ちて根づき、新しい個体が誕生するのです。

まるでヒッチハイクで旅をする植物。しかも、乾燥地でも1年ほど生き延びられるという生命力の強さ。水がなくても増えていく、というのはサボテンの大きなアドバンテージです。

トゲは空気中の水分をも回収する役割があります。霧や結露から得た水分は、トゲの先端から根元へと移動し、最後には植物体へと吸収されていきます。重力に逆らって水を運ぶこのプロセスは、トゲの内側にある親水性の粘液の働きによるものです。たった1滴の水も無駄にしない。これぞ砂漠生まれの合理主義。

このように、サボテンはトゲというシンプルな形に、信じられないほど多機能な役割を詰め込んできました。防御、光の遮断、温度調節、繁殖、水分収集としても働きます。これって、人間でいえば「料理しながらYouTube見て、ついでにスクワットもする」みたいな“ながら機能”の塊です。サボテンのトゲは、自然が何万年もかけて作り上げた、超高性能のマルチツール。「一石*鳥」というのはサボテンにふさわしい言葉です。

私たちはサボテンという植物のたくましさと、自然のデザイン力にあらためて驚かされます。

※本稿は、『自然はすごい いつもの道が美しく見える5つの視点』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

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