どうすればいいか分からない
婦人科の医師は、妻から光のこれまでの症状を一通り聞くとすぐに言った。
「小学3年生でPMSなんてありませんよ。小児科の病気だと思う。小児科に連絡するから、このまま小児科を受診してください」
あまりにそっけない言葉に妻は面食らった。だが、そう言われればしかたない。妻と光は小児科外来に移動し、待合室で名前を呼ばれるのを待った。小児科は予約していないし、待合室には子どもが溢れていたので呼ばれるまでかなり待つなと覚悟した。
やがて光の名前が呼ばれた。診察室に入ると女性医師が座っていた。のちに私は知るが、この医師は専門が神経だった。「神経」とは「精神科」ではない。脳とか末梢神経の働きを診る小児科医である。0歳児のときにお座りやハイハイが遅れていると、専門医として赤ちゃんを診るのが小児神経科の役割だ。アレルギー疾患とか感染症に比べて小児神経科を受診する患者は多く、小児科の中で最も外来患者の数が多いと言われている。
また、神経科の医師は、てんかんなどの純粋な脳や末梢神経の病気だけでなく、子どもの発育全体を診る機会も多い。そのため、小児の総合医的な実力を持っていることがよくある。この病院の小児科の常勤医は2名で一人はアレルギーが専門、もう一人が神経専門だった。光はたまたま小児神経医にあたったのだった。
その女性医師は、熱心に妻と光の話を聞いた。そして、妻に診察室の外で待機してもらい、光のしんどさに丁寧に耳を傾けた。医師は、婦人科の病気ではないことを説明し、女の子であれば誰でも同じように嫌な思いをすることを伝え、光を励ました。混雑している外来診療の中で、その医師は光のためにたっぷり時間を取ってくれたのだった。
光はとても納得することができた。われわれ夫婦も小児科医の対応がとてもうれしかった。しかし……問題は何も解決しなかった。月経が近づくと光は気分が塞ぎ、抑うつ的になった。自分で自分をどうすればいいか分からない状態になっていた。
