学校に行けなくなった

学校生活が窮屈になっていく。学校は楽しいし、友だちもいる。先生もよくしてくれる。理由は分からないが、光の心には得体の知れない闇のようなものがのしかかっているように見える。5年生になり学校に行けない日が少しずつ増え、やがてそれは不登校という形になった。いじめを受けたわけではない、嫌なことがあったわけではない。なぜか学校に行けなくなった。

私は光にどう対応したらいいか分からなかった。叱ったり、宥めたり、励ましたり。光は元気なく、塞ぎ込んでいた。

(写真提供:Photo AC)

だが妻は動じていなかった。

「学校、行けなかったら行かなくていいよ。行きたくなったら行けばいいんだから。でもね、規則正しい生活をして。夜になったら寝る。朝になったら起きる。それから、なるべく母さんといろんな所に出かけよう。家にいると、心の栄養が痩せ細っちゃうよ。たくさん出かけて心に栄養をつけよう」

妻は、光を美術館や博物館、そして遊びのイベントがあればそこへ連れ出した。私は光の心が晴れればと思って、iPadを買い与えた。これまではスケッチブックに絵を描いていた。紙はいずれ色褪せる。デジタルで絵を描けば永遠に残る。iPadを渡して、使い方を説明しようと思いながら、仕事が忙しく1週間が経った。その頃には光は、自分でお絵描きアプリをダウンロードして指先を使って自由に絵を描いていた。

自宅には同級生の男子がその日一日のプリントなどを毎日下校時に届けてくれる。でも光の不登校が1か月、2か月となると、その子は音を上げてしまい、自宅に寄ってくれるのは週に1回になった。そして3か月が過ぎたところで、光は少しずつ学校に行くようになった。4か月目で復帰した。これもきっかけはなかった。