即物的な "リアル” をとことん詠う

金稼ぐこといろいろに考えて興奮をして熱を出したり   花山周子

『現代日本産業講座』の角が頭に当たれば即死するなり  花山周子

花山周子さまは装幀家としてもご活躍。またその前に歌人、花山多佳子さまの娘としても知られています。初期は穏やかな歌い口ながらとぼけた味わいが特徴的で、第一歌集『屋上の人屋上の鳥』を読んだ読者は皆この歌の主体を好きになってしまうでしょう。決して作者が好感度を狙っているわけではなく、お金の歌のように、人がなかなか歌わないことを歌う肝の太さにときめいてしまうと言えばいいのでしょうか。


「金稼ぐこといろいろに考えて」は面白いです。何よりそこまで自己開示できるのがすごいですね。「お金」とも言わず「金稼ぐ」という言い方が図太いです。さらには「熱を出したり」まで書くともはやチャーミングの域。そしてなんとなく、読者がギャップに微笑んでしまうのは、ここで考えた「金稼ぐこと」ではお金は多分稼げなさそうなところが透けて見えるからです。「熱を出」すほどテンションが上がってお金のことを考えるとは、まずろくなことはありませんからね。


二首目も即物的。歌集を読むと、美術学校に通っていたことが明らかになりますが、歌人の多くが創作をイメージや風景から作り出すのに比べ、物質から創作するシビアさがここには見えますね。あの本、頭にぶつけたら死ぬな。その物質的な強い確信を強い文法「なり」でビシッと納めているところは、ものをイメージで見ず、もののリアルさをとことん感じている人物像が浮かんできます。