4,000匹以上のぬいぐるみと暮らす小説家・新井素子さんの日常がここに。「ぬい活」が一般化するはるか以前、「ぬい」という呼称を生み出し、社会からずっと変人扱いされてきた新井さん。「ぬいぐるみは生きている」と本気で確信し育んだ「ぬい」たちとの生活には、ただごとではない発見と幸せのヒントが詰まっていました。

新井さん家のぬいは “TV好き” 

さて。
ぬいぐるみと一緒に生活していて、楽しいことは一杯あるんですけれど、“一緒に遊ぶ”って、これはかなり上位にきますよね。その遊び方も沢山あって、“ぬいさんと一緒に散歩”とか、“ぬいさんと一緒に旅行”とか、“ぬいさんと一緒に観劇(あるいは映画)”とか……。
でも、一番簡便なのがこれ。
ぬいさんと一緒にTV!(何たって自宅でできる。ひとによっては、また、ぬいのサイズによっては、一緒に出かけるのが「ちょっと……」って思うこともあるかも知れませんが、これはその辺、楽勝です。何たって、おんなじ家にいるんだもん。)

よその家のぬいぐるみのことは、私、よく判らないんですけれど。うちのぬいさんに限っては……その……TVが好きな子が多いです。いや、もう、もの凄くいます。うちのぬいさんって、世間一般からみると、やたらとTVが好きなんじゃないのか?
その理由は……何となく、判ります。


うちでは、旦那が、もの凄くTVが好きなんです。なのに、私は、TVが別に好きじゃない(というか、自分では、ほぼ見ない)。だから、うちでは、特に旦那が会社員だった頃は、TV、ついている方が稀だったんです。(会社員時代の旦那は、あまりうちにいなかった。そして、ずっと家にいる私は、地震があった時しかTVをつけない。――これは、地震速報を確認する為です。うん、私、地震でもない限り、まず自分でTVはつけないよなあ――。というか、何故かうちの電化製品は、私が触ると壊れる傾向が強く……「事情がない限りTVのリモコンに触るな」って旦那に言われています。実際に、私が触っただけなのに、TVの設定が何故かおかしくなったことが、何回もあったので。)そして、旦那が家に帰ってきてからと、休日は、旦那が起きている限り、我が家はずっとTVがついている。


うちのぬいさんは、結構みんな旦那が好きです。だから、その旦那が好きなTV、うちのぬいさんはみんな好きで……でも、平日うちにいる私が、まずTVを見ない。
これがどんな結末になるのか……何となく、判りそう、でしょ?
何か、うちのぬいさんにとって、TVって“特別なもの”になっちゃったんですよね、その、気分的に。
いや、別に私は、TVを禁止していた訳でも何でもないんですが……ずうっとうちにいるぬいさんにしてみれば、何が何だか判らないけれど、旦那がいる時には必ずTVがついている、私しか家にいない時には絶対にTVはつかない、こんな状況が続くと……えーと……。
結果として、うちのぬいさん、ちょっと変な思いを抱くようになってしまったんじゃないかなあ、って。