「羨望の三角形」の魔法

文化人類学者のルネ・ジラールが提唱した「羨望の三角形」という言葉がある。私たちは、対象を自分が欲しいから欲しがるのではない。他人がそれを欲しがっていたり、他人が持っているのを見て、初めてそれが欲しくなるのだ。

かつて、品薄で何ヵ月も探し回った限定のシールがあった。

持っている人が自慢していたり、メルカリで高値で取引されたりしているのを見て、喉から手が出るほど欲しかった。けれど、後に増産されて誰でも手に入るようになった瞬間、驚くほど興味が失せた。

そのシール自体に価値があったのではない。誰かに「いいな」と思われるという、その「羨望の三角形」の頂点でなくなった瞬間に、それはただのシールに戻ってしまったのだ。

「まじで、なんでこんなもん欲しかったの?」と目がさめる体験を今まで何度したことか。

モテる男性がカッコよく見えるのも、皆が持っているバッグが欲しくなるのも同じだ。私は「自分の好き」ではなく「他人が欲しがっているもの」を手に入れて自分の価値を証明しようとしている。

それで得られるものは、誰かからの一瞬の「いいね」だけだというのに。なんて滑稽なんだろう。