乃木に疑いの目
週明けの月曜日。乃木はバルカ共和国に到着し、GFL社を訪問した。
「誤って送金してしまった差額の9千万ドルを、すぐに返金していただけないでしょうか」
乃木は床に手をついてアリに頭を下げる。しかしアリは困った様子で答えた。
「いただいたお金は、すでに下請け企業へ送金してしまいました」
1億ドルは、すでに10社の下請け企業の口座に振り込まれてしまった後だという。
その頃、丸菱商事の専務室では関係者が集められ、システム管理部が誤送金の調査結果を報告していた。結論は、システムエラーは確認されず、人為的に10倍の金額が送金されたというものだった。
さらに社内の監視カメラ映像を調査した結果、経理部へ送金申請が届いた時刻に、送金元のパソコンを操作していたのは乃木だったことが判明する。
一方、バルカ共和国で八方ふさがりの状況に追い込まれていた乃木は、自らの別人格・Fの助言を受け、CIAに勤務する友人・サム(Martin Starr)に送金先の調査を依頼する。
その結果、1億ドルはダイヤモンドに換えられた上、「アマン建設会社」という企業へ流れていたことが判明した。
タクシーでアマン建設があるセドルを目指した乃木だったが、道中の砂漠で運転手にだまされてしまう。用を足すため車を降りた隙に置き去りにされてしまったのだ。
乃木はセドルを目指して砂丘を歩き続けたが、ついに力尽きて倒れてしまう。
そんな乃木を救ったのが、日没後にラクダで近くを通りかかったアディエル(Tsaschikher Khatanzorig)と娘・ジャミーン(Nandin-Erdene Khongorzul)だった。2人は乃木が手にしていたスマートフォンの光に気づいたのである。
アディエルの家で目を覚ました乃木は、親子の看病によって体力を回復する。
アディエルは2年前の事故で妻を亡くし、ジャミーンと二人暮らし。ジャミーンはその事故を目撃したショックから言葉を話すことができなくなっていた。