俳優の角野卓造さんは15年前、血管が詰まる前触れと考えられる症状に見舞われました。以来、自分の体の状態と向き合うために始めた、日々の習慣や検査の徹底ぶりは「オタク」さながらで――。(構成:上田恵子 撮影:川上尚見)
舞台上でセリフが出てこなくなった
自他ともに認める酒好きの僕ですが、最近は健康番組に呼ばれることも多いんです。これまでに一過性脳虚血発作と狭心症という、血管にかかわる病を経験しましたが、これからの人生も大好きな食事やお酒を楽しみたい。その一心で自分なりに体を気遣った生活をしていて、その様子が「健康オタク」だと言われることもあります。
今も365日晩酌をしていますが、若い頃はさらに豪快でしたね。毎晩のように新宿ゴールデン街に繰り出しては、1皿200円のおつまみだけでひたすらお酒を飲んでいました。その後も、劇団(文学座)の健康診断は受けていましたが、特に体のためにいいといわれることをした記憶はありません。
大きな不調に見舞われたのは2010年、61歳のとき。東京・新国立劇場で井上ひさしさんの『東京裁判三部作』に出演していた際、突然セリフが出てこなくなったのです。
この感覚は、会話をしていて固有名詞が出てこないのとは違う。僕は台本を絵画的に覚えていて、芝居中、「今あのページのこのへんのセリフを言ってるな」と頭のなかに地図が見えるのですが、それが一瞬見えなくなったのです。
よく「頭が真っ白になる」という言い方をしますが、それと近いような、違うような……。「あれ?」と思ってからなかなか調子が戻らず、共演者にアドリブで助けてもらいながら舞台袖に入りましたから、お客さんのなかには気づいた人もいるかもしれません。