標準治療を選んだ理由 “美味しいとこどり”はできない
診断後、国立国際医療研究センターで、「抗がん剤投与、乳房切除、放射線治療というがんの標準治療の全てを行うフルコースです」と方針の説明を受ける。がんが右の乳房全体に散らばって1つ1つが大きく、手術での摘出が難しいため、先に抗がん剤治療をしてからの手術、という方針だった。告知の方法などについて違和感があったアンナさんは、治療は「国立がん研究センター中央病院」で受けると決めた。
がんセンターの主治医の乳腺外科の先生方には、ステージ3Aとはいえ、今の医学で治療できるがんだと言ってくださいました。詳しく治療の説明を聞いたところで、「標準治療にかける」という方針が私の中で固まります。私の場合は抗がん剤投与、乳房切除、放射線治療というがんの標準治療の全てを行うフルコース。髪の毛を失うことも聞かされましたし、簡単な道のりではないことは、私にもわかりました。
公表をしたために、知り合いのお医者さまから連絡があり、ワンクール400万円する保険外治療を提案していただきました。それも特別に無料でやってくださると。でも私は、普通は手が出ないような高額の治療法で助かりました、と自分のファンでいてくれた人や、世間に対して言いたくないなと思ったのです。
医学の世界で最も研究し尽くされた標準治療で、日本の保険で受けられる治療法で治ってみせたい。それで生き抜いてこそ応援してもらえるし、喜びも痛みも共感してもらえるんじゃないかと考えました。たとえそれで助からなくても文句は言わないし後悔しない。その思いに不思議と迷いはありませんでした。
がんと告知されたことで、なぜか私の直感が研ぎ澄まされるという変化がありました。それが私の通称“がんセンサー”です。例えば、知り合いの中に「この人どんな人なのかな?」というのが、今までわからなかった方もいました。それががんになった途端、誰が本当に優しい心を持った人なのか、はっきりわかるようになったんです。このセンサーのおかげで自然とふるいがかかって、周りには大切な人、優しい人しか居なくなり、人間関係は格段に楽になりました。
とはいえ、「がんが治るから」とたくさんのお誘いをいただくことになります。このキノコが効く、この十円玉を飲み物に必ず入れてください、この曲を聴いてください、この宗教に入ってください……本当にさまざまなジャンルにわたって。
私も、自分のがんが今の医学で手の施しようがない状態なら、何かを試したかもしれません。でも、幸いなことに私には治療をしてくださる先生方がいました。だから、万が一でもその治療の邪魔になるようなことはしたくなかった。いろんな治療を同時に試して“美味しいとこどり”って、できないんじゃないかな、というのが私の考えです。
抗がん剤を安全に投与するため、1回1回、事前に検査をします。風邪をひいても、慣れないものを口にして体調が崩れても、治療は2週間先に延びてしまう。私はごく一般的なサプリですら先生に勧められなければ飲まないと決めて、治療に臨んでいました。治療中には細心の注意を払って体調管理に努め、おかげさまで予定通りに治療を続けることができました。