忘れられない「ステージ」
13歳で終戦を迎えた、ぼんこさん。まだ子どもと言っても良いほど年若かった彼女は、今も変わらない朗らかさで戦時中の苦労を乗り越えてきた。
ひっくり返した木箱の上に立って、皆の前で流行歌を歌う。そんな快活な小学生だった彼女の周りには、同じように歌い踊ることが好きな同級生たちが集まり、学校の休み時間にステージごっこを楽しんだという。
彼女が宝塚歌劇と出会うのはまだ先のことだが、「未来のタカラジェンヌ」としての素質を感じさせるお話だ。
80年前のことを思い出す時、彼女にはどうしても忘れられない「ステージ」がある。
終戦間際、1944年のことだった。ぼんこさんが通っていた小学校では、通常授業をすることが殆ど無くなっていた。広い講堂には大きなテーブルがいくつも並べられ、生徒たちは軍事用品に関わる手作業に従事したという。
「今になって考えれば危ない作業もあったかも知れないけどね。そういうことも、お国のため。どんなに小さい子どもでも、役に立つことをしようっていう考えだったのよ」
しかし空襲が頻回になり、小学校への軍事用品の運搬が途絶えてしまった。
「そしたら先生が、私たちに何をさせて良いかわからなくなっちゃって」
いつもは威厳のある校長先生の困り顔を思い出したのか、ぼんこさんはくすくすと笑った。