「未来が託せる人間がいる」
<劇中では、小一郎(秀長/仲野太賀)と秀吉との強い絆が描かれてきた。農民出身だった兄弟が、信長に取り立てられ、戦国の世を駆け上っていく。信長は豊臣兄弟の絆を試すようなことをしては、2人の信頼関係の強さを目の当たりにして心を揺さぶられてきた。信長が弟の信勝(中沢元紀)と作りたかった関係がそこにあったからだ。本能寺の変の直前、信長が小一郎に「兄を殺したくなったことはないか」と尋ねる場面が印象的だった>
『豊臣兄弟!』は兄弟が大きなテーマ。戦国時代の話ではありますが、兄弟関係や家族の形は、どうしても今の自分たちが共感できるように置き換えられています。当時なら平気で家族間・兄弟間の殺し合いはあった。でも、一方で、そうではない兄弟関係を作った人もいたはずです。
<戦いで傷ついた信長の目の前には信長に恨みを持った人物の幻が次々現れる。信長の義理の弟、浅井長政(中島歩)、殺してきた女子供…。甥の信澄(緒形敦)の幻から「父の仇」と言われた信長は疲れ果て、何かを諦めたような表情を見せた。駆けつけた信長の近習・森乱に「脇差を貸せ」と頼む。覚悟を決めた信長の前に現れたのは信長が謀殺した弟・信勝の幻だった。信勝の幻が「われらの一生、ろくなものではござりませんでしたな」と話すと、信長は秀吉と小一郎との日々を思い出す。そして、不敵な笑みを見せ「ぜひもなし」と言い放ち、脇差しを自分の腹に突き立てた>
信長が死を覚悟した瞬間に、思い出したのは、かつて殺してしまった弟・信勝でした。信長のトラウマというか、清算したかったのが信勝の存在です。信勝を目の前に、信長は「なんて俺は弱い存在だったんだろう」と自覚したのではないでしょうか。信勝の幻に「我らの一生、ろくなものではござりませんでしたな」と言われる場面については、監督と話をしました。信長としては、「お前はそうかもしれないけれど俺は違う。俺には未来を託せる人間がいる。だから余裕で死んでやるよ」という気持ちでラストを迎えられたと思っています。
過去に信長を演じた俳優にも、「希望を持って死んでいく信長」を意識した方もいたかもしれませんが、今回の信長は『豊臣兄弟!』の物語に則った上で、秀吉と小一郎へのメッセージを残して散って行けた。それが今回の本能寺の変での核心部分だと感じました。
森乱を演じた市川團子さんは、第25回からの登場ですが、素敵な森乱を演じていました。今回は信長との関係性があまり詳しくは描かれていませんが、最後に信長のそばにいたのが森乱。初めての映像作品でものすごく緊張されていましたが、身のこなしも綺麗でしたね。