また、暮らしにかかわる役割を入居者で分担しているのも、張り合いとなっているという。

「本部の財政にかかわる人がいたり、お花を生ける人がいたり、パソコンを使って催しの告知を作る人も。私たちは『小さなお仕事』と呼んでいます。高齢者だからってなんでも人におまかせ、ではつまらないですよ」

「せせらぎ」では月2回の運営委員会、月1回のスタッフ会議と入居者会議があり、この3つの会議で暮らしにかかわることを協議して決める。たとえばゴミの出し方や共用部分の施錠ルール。物価高が続くなか、食費値上げを受け入れるかどうかについては、議論に3ヵ月かけた。

「入居面談の時には、ここは介護施設ではないと説明します。悩んだ時は『せせらぎ』も相談に乗りますが、自分のことは自分で決められる人のための暮らし処ですよと」

「せせらぎ」を運営するNPO法人「川崎北部グループリビング」前理事長の前田由子さんはこう語る。前田さんは最高齢の入居者よりも年上の93歳。「せせらぎ」を立ち上げた時は70代の半ばだった。

「医学の進歩により長寿社会となった日本で、高齢者が生きていてよかったと思えるような暮らし処を目指し、思いをひとつにする人たちとつくったのが『せせらぎ』です。始めた時には想像していなかったくらい、入居者の皆さんもご長寿で」

目下の課題は、介護が必要になった時に、どうすべきかということだという。

「そろそろ次の道筋を作らねばならないところに来ています。まだやることがあるから、ぼけてはいられませんね」

2につづく

【関連記事】
1階は高齢者向け、2階は若者に半額で。世代を超えた交流が広がる多世代共生型賃貸住宅
夕食、誕生会、居住者会議の参加がルール。月16万円夕食つき。70代から90代までの10人が共に暮らす「グループリビング」
上野千鶴子「大切な人の在宅介護を3年半。ライフワークの〈納得いく在宅ひとり死〉を、介護する立場で体験して」