一花 姉さんは、噺家になって初めて言葉を覚えてしゃべり始め、しゃべる楽しさ、笑ってもらう楽しさにも目覚めたんだ。私はまったく逆なんです。

子どもの頃から人前に出るのが好きでした。演芸好きの父が書いた脚本で、親戚の男の子と2人で親戚のおじちゃんおばちゃんの前で漫才をやったことが原体験。そしたら、笑いがドーンときて、あれはくせになってしまいますね。笑わせることが好きというよりも、みんなが笑顔で、笑い声に包まれた空間に身を置くことが好きでした。

大学では演劇サークルに入り、一時は役者を目指してオーディションを受けたりしたんだけど、なんか違うなあとも感じていたんです。

そんなあるとき、落語好きの先輩が寄席に連れて行ってくれました。劇場とは異なる寄席のあの独特の雰囲気――お客さんがゆったりしていて、余白があるというか――、とにかく変なところでしたが、妙に心地よかった。

二葉 いい出会いやなぁ。

一花 私は役を演じたいというより、お客さんに世界観を見せたかったんだと気づいた。噺家って何にでもなれるんです。おじさんにも幽霊にも動物にもなれる。しかも一人で。あの万能感――実際はそんなに生やさしいものではなくて、あとで、挫折を味わうことにはなるんですが――「ここが私の居場所だ!」って勝手に思いました。

二葉 でも、お父さんに反対されたんやんなぁ?

一花 はい、それで勘当騒ぎにまでなって断念(笑)。一度あきらめたのですが、それから3年ぶりに寄席に足を運んだら、驚くほど変わってなくて……感動。やっぱり変なところだって。噺家にならなきゃ後悔すると思ってもう一度。今度は父が折れて、春風亭一朝(いっちょう)師匠のもとに弟子入りしました。

二葉 師匠は、どない言わはったん?

一花 最初は、女の子にはすごく厳しい世界だからやめたほうがいいよ、って言われました。師匠はそれまでは女性の弟子は取らない方だったようで、私が入ったとき、兄弟子はみんな驚いてました。

後編につづく

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