人生は練習の繰り返しだった

<俳優として周囲の期待に応えようとするあまり、自分の気持ちを後回しにしてしまう――。『今日も、自分を生きる練習』では、佐津川さんの華やかなキャリアの裏側にある悩みや迷いに向き合う過程がつづられている。また、『蝉しぐれ』の監督・黒土三男さん(故人)との思い出や、一人旅での出会い、2年間に及ぶホテル暮らしなどの日常を振り返ったエッセイも収録された>

エッセイはウェブサイト「幻冬舎plus」で2021年から続けている連載に、書きおろしを加えて一冊の本にまとめたものです。編集者の方が連載の中から自分の生活にフォーカスしたものを多く選んでくださって、何気なく書いた日常が、ほかの人にとっては面白く映るんだということがとても新鮮でした。

『今日も、自分を生きる練習』(著:佐津川愛美/幻冬舎)

タイトルも編集者さんが考えてくれました。『生きる練習』という言葉をいただいたことで、私がずっとぐるぐる悩んでいたことが、全部「練習」だったんだと思えて、すごく肯定してもらえた気がしたんです。自分を生きることに自信が持てなかったけれど、私はずっと練習してきたんだ。もしかしたらこれから先の人生が本番になるのかもしれないんだって。 

私は映画やドラマの「現場」は好きですが、人との関係に気を遣いすぎてしまう部分もあるんです。特に2023年は仕事上の人間関係を前向きにとらえられなくなり、疲れてしまって。少し仕事のペースを落としていた時期でした。

「自分が出ている作品をいいものにしたい」と思うと同時に、「関わってくれた人みんなが楽しかったと思える場にしたい」という気持ちが少し強すぎてしまって。でも、私だけでどうにかできない部分もあるので、悩むこと自体が本当はちょっとおこがましいことだったんですよね。自分の手に負えない部分まで悩むより、自分ができることを考えたほうが本来は良かったんだと今なら思えます。

佐津川愛美
旅行先での1枚

タワマンを舞台にママ友同士の人間模様を描く7月期のドラマ『おちたらおわり』(日本テレビ系)では、主人公・月島明日海(宇垣美里)と同じタワマンに住むママ友・丸山朋代役を演じています。同じアウトプットでも、私にとって演じることと書くことは別のものです。演じることは、役という軸があって、この人物ならどう考えるか、どう動くのかと自分なりに掘り下げる作業。でも、自分のことを書くとなると正解がわからない。

それでも一冊の本としてまとめてもらえたことで、自分では普通だと思っていた毎日が、とたんにドラマチックに思えたんです。きっと誰にとっても同じで、自分の日常をどう見るか、どう受け止めるかで、いくらでも面白くとらえることができるんじゃないかなと思います。

※『蝉しぐれ』の蝉は正しくは旧字

佐津川愛美
自分では普通だと思っていた毎日が、一冊の本になったとたんにドラマチックに思えました(撮影:本社 奥西義和)
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今日も、自分を生きる練習』(著:佐津川愛美/幻冬舎)

映画『蟬しぐれ』(「蝉」は正しくは旧字)でスクリーンデビュー以来、数々の作品で印象的な役を演じてきた佐津川愛美さん。

本書は、30代後半を迎えた佐津川さんが、「演じる」ことと「生きる」ことのあいだで揺れながら、自分自身の輪郭を見つめ直した軌跡を綴った一冊です。