大型嫉妬案件
そんな中、また大型嫉妬案件が目に止まった。同年代の女性エッセイストの子育てに関するエッセイがSNSで大バズりしている。
たくさんの人が拡散するので一日に何度も何度もその記事を見かけた。みんなが「めちゃくちゃ面白い! みんな読んでほしい」「この文章、天才としかいいようがない!」と褒めている。彼女のアカウントはみるみるフォロワーが増えていって、投稿を見かけるたび「ちくしょう!」と嫉妬に狂った。
サムネイル画像もすっかり覚えてしまい、使われているピンクとグリーンのふざけたキャラクターがとても腹立たしい。似たような色合いをした違う広告画像をそのエッセイ投稿だと思ってしまい「またか、ちくしょう! ……あ、違ったわ」と間違えるほどにムカついた。
なんで私じゃないんだ……! なんで私のエッセイはバズらない!? なんで彼女なんだ!!
はたと気がついた。
……あれ?
「なんでだ?」じゃないだろ。私には実力がないんだろう? じゃあいいじゃん。
なんで嫉妬してるんだろう?
まさか私は、本当は「自分にも実力がある」と思っているということなんだろうか?
いやいや。私は本当に自信がないはず。
待てよ? 自信だってそうだ。実力がないのだから自信なんてあるはずがない。それなのに「自信を持てないこと」にこんなに苦痛を覚えるということは、心の底から「なんの実力もない」とは思っていなくて、実は「本当ならもっと自信があるべきだ」と思っているということなんじゃ……?
ああ、なんて傲慢なんだろうか。私は他人の活躍に嫉妬なんてする権利もないし、自信なんてつくはずがないっていうのに。
「エッセイスト」と名乗っているうちに、いつの間にか勘違いしてしまっていたのだろうか?
なあんだ、簡単なことじゃん。だとしたら、もう大丈夫だ。
これからはすごい人たちの文章を「プロはすごいなあー」と素直に楽しめる。自分には実力がないのだから、身の丈に合わない評価を望むほうがおかしいのだ。
そうやって理屈で自分をねじ伏せようとした。納得できたはずだった。少し気が楽になった気がした。
気がした……だけだった。
どれだけ自分に言い聞かせても嫉妬が湧いてきてしまう。数日経ってもまだSNSでしつこく流れてくる、あのピンクとグリーンのサムネイルが目に入った瞬間、どうしても反射的に「ちくしょう!」と奥歯を噛み締めてしまう自分がいた。
わけがわからない。自信もないのに、なぜなんだ? やはり私は「自分には実力がない」と本気で思っているわけではないのか? 評価されずに傷つくのが怖くて防御しているだけなのか?
