購入者の構成は10年で一変―東京・大阪の登記簿調査から
では、「住まない買い手」による購入は、実際にどの程度進んでいるのでしょうか。本書では、調査時点(2025年12月)と、その約10年前に建てられたマンションの新築時(引き渡し時)の全住戸の登記簿情報を比較し、購入者の構成変化を整理しました。
対象に選んだのは、類似した良好な住環境を持ち、子育て層に人気の小学校区にある大手デベロッパーが手がけた駅近のブランドマンションです。これらのマンションごとに、登記簿に記載されている所有者情報をもとに、個人と法人を区別した上で、所有者の住所が当該マンションである場合を「自己居住」、当該マンションの住所ではない場合を「非居住」として集計しました。
その結果、千代田区Aマンションのすぐ近くに11年前に建設された千代田区のBマンション(新築時価格:7000万円台~1・8億円台)を見ると、自ら住むために購入したと考えられる「自己居住者」の割合は83%でした(図表0−2)。また、登記簿に記載のある抵当権の欄を見ると「自己居住者」の住戸の大半が銀行の住宅ローン利用による購入でした。つまり、千代田区という都心のブランドマンションであっても、11年前は自己居住目的の購入者が大半を占めていたことになります。
ところが、Bマンションのすぐ近くに2025年に竣工したAマンション(新築時価格:1億4000万円~13億円)では、「非居住の個人」と「法人」が65%を占めていました。特に法人による購入割合は、Bマンションの2%に対し、Aマンションでは35%とかなり大きな差があります。たしかにこの10年で新築マンション価格が大きく上昇し、Aマンションは個人ではなかなか手が出ない高額な住戸が多いという事情はあります。
しかしそれを差し引いても、購入者構成の中心は、明らかに「住む人」から「住まない買い手」に移っていると言えます。
そして興味深いことに、大阪市西区のマンション2でも同じ傾向が確認されました(図表0−3)。
自己居住者の割合は、約7年前のDマンション(新築時価格:4000万円台~6000万円台)では66%でしたが、2025年築のCマンション(新築時価格:8000万円台~1・1億円台)では42%に低下していました。一方、法人による購入割合は2%から31%へと大きく上昇していました。
購入者全体の約6割を「法人」や「非居住の個人」が占めるという事実に接したとき、「そりゃ、住宅価格は高騰するよね……」と思わず声が出てしまいました。想定していた以上に「住みたい人」ではなく「住まない買い手」の手に渡っている割合が高かったからです。
さすがに千代田区は高額すぎるとしても、大阪市西区の新築マンションの価格帯を見ると、共働き世帯なら購入を検討できる住戸も含まれています。にもかかわらず、自ら居住しようと考えている世帯に売られたのは、全住戸の42%と半数にも満たない状況でした。さらに、新築時に法人や非居住の個人投資家に売られた住戸の多くが、1年もたたないうちに転売されているという実態も明らかになっています。
短期間で転売が繰り返されるたびに、住宅価格がどんどん押し上げられていく。この構造は、登記簿調査だけでも十分に読み取ることができました。