違和感のワケ
ぼくはペダルを漕ぎながら周囲をキョロキョロと見回しました。しかし、とくに変わったところはありません。あるとしたら、ジムにはぼく以外、誰もいないのに、なぜかロッカーにぼくの物ではない荷物が置かれていることくらいです(って、これは、まあまあの違和感ですね)。
耳を澄ますと、エアコンの音や、扇風機の音が、どこか恨めしげにジムのなかを漂っています。
いや、おかしいぞ。本当に、おかしい。いつものジムとは、空気感がまったく違う……。
ゾクゾクしはじめたぼくは、両腕に鳥肌を立てていました。いつもは貸し切りを喜んでいたのに、この夜に限っては、誰か来てくれないかなぁ、なんて思ったりして。でも次の瞬間、ふと気づいたのです。
アレっ? 今夜に限って、ノリノリの音楽が流れてないっ!
おそらくスタッフが間違って消してしまったのでしょう。
それからぼくはシーン……とした空間で、ひとり黙々と、いやゾクゾクしながら筋トレをしたのでした。
深夜は音楽が大事だなぁ♪
※本稿は、『となりの筋トレ 小説家は見た!ジムの愉快な日々』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
『となりの筋トレ 小説家は見た!ジムの愉快な日々』(著:森沢明夫/飛鳥新社)
数々の心温まる名作を送り続けた小説家・森沢明夫の前代未聞の人間観察エッセイ。
疲れた毎日に最高な「心のプロテイン」となる、スポーツクラブ奮闘日記。
読めば誰もが笑って元気になれる!




