『虹の岬の喫茶店』や『おいしくて泣くとき』など、数々の心温まる名作を生み出した小説家・森沢明夫さんは、日頃の執筆の合間にスポーツクラブに通い詰めています。そこでは、風呂で滝行するおじさまやアンダーウェアのみの全身タイツなおじさまなど、ツッコミどころ満載の愛すべき利用者たちとの出会いがありました。今回は、森沢さんが遭遇した愉快な隣人たちと自らのトレーニングの日々を綴った『となりの筋トレ 小説家は見た!ジムの愉快な日々』より、一部を抜粋してお届けします。
プールを覗く怪しい影が……
ある夜、筋トレを終えたぼくは、いつもどおりバイクで帰宅すべく、スポーツクラブのプールに隣接した駐輪場へと向かいました。すると、細く開いたプールの窓の隙間から、なかを覗き込む怪しい男を発見!
しかも、その男、ぼくのバイクに寄りかかるように手を置いているではありませんか。
「あのぅ……」
と背中に声をかけると、男はビクンと弾かれたようにこっちを向き、ぼくのつま先から頭までをサッと見てから早口でまくし立てました。
「あ、あ、あなたは、ここには、よく来るんですか?」
「は……?」
いきなり素っ頓狂な質問を投げてきたこの男、おそらく年齢は40代で、中年太りに黒縁メガネ。バンザイしたらヘソが出そうなくらい小さな黄色いTシャツを着ていました。
怪しい。怪しすぎる。ぼくが警察官だったら絶対に職務質問です。