人生は運
高野 先生は戦争を経験されていますが、戦時中は実際に人が死ぬところを目にする機会もあったわけですか。
養老 たとえば2人で歩いていて、機銃掃射があって隣のやつに弾が当たって死んだけど、俺には当たらなかった、なんてことは、ごく普通にありましたからね。そうすると、弾は人を選んでいないってことが、誰にでもわかるんです。戦場でも同じでしょ。隣のやつは戦死したけど、自分は生きてる。そういうことを経験するとね、人生は運だって、よくわかるんですよ。
高野 そういう経験をした人と、死が隠されてきた時代の人では、やはり違いますね。
養老 人間は、どのくらいの知恵で利口になるんですかね。年を取ってくると、だんだん疑わしくなってくる(笑)。生まれたままで、特に利口になってないんじゃないかってね。どんどん利口になるのはAIだけなんじゃないですか。
高野 知恵というか、がんの場合はその過剰なイメージに流されて、自然な判断ができなくなってきているようにも思います。
養老 僕も時々アップアップしますよ。「病院行くの、いつやめようかな」なんて思ったときに。最終的には、そこは自分で決めなきゃいけない。CTを撮りに行くのが嫌だったら、撮らないでおけばいい。「1年後にしよう」という判断があってもいいわけです。
