「いえ、そもそも跡継ぎを作るために結婚するんじゃないんだ」

「跡継ぎも作らんのに結婚? なんのために? 相手はどんな人なんや」

 矢継ぎ早に訊ねる。この年代の人はやはり結婚イコール子供なのか。

「向こうは俺より二つ上で、今年還暦なんだ」

「還暦? なんでまたそんなバアサンと。どうせやったらもっと若い子もろたらええのに」

 叔父が驚き、呆れた声を上げた。

「いい人なんだ。一緒にいて心が安らぐ」

「安らぐのも大事やけど……。でもな、若いときから一緒に歳を取ってきたバアサンなら我慢できても、知り合ってすぐのバアサンの顔見て暮らすのは辛いぞ。それに介護はどうするんや。下手したらおまえが相手の介護をせなあかんようになる。悪いことは言わん。その人と結婚するのは止(や)めとけ。独り身が寂しいんやったらもっと若いのにするんや」

「介護を頼むつもりはない。彼女以外なら結婚する気はなかった」

 すると、叔父が大きなため息をついた。

「えらい惚れたもんやな。向こうは初婚か?」