「いえ。死別で娘が一人いる」
「その娘は結婚してるんか?」
「いえ。独身です」
「それやったら、その娘にしといたらどうや」
冗談なのか本気なのかわからない口調だ。俺はむっとしたが、できるだけ穏やかに返事をした。
「叔父さん、もう決めたんだ」
「でもな、財産目当てやったらどうするんや?」
「そんな人じゃない」
「そりゃ、自分から財産目当てだ、なんて言うわけないやろ」
叔父の心配は収まらず、木綿子のことを根掘り葉掘り聞かれた。俺は差し障りのない程度に答えた。
「じゃあ、蔵はどうするんや。おまえの代で潰す気か?」
「蔵は今、住み込みで働いてくれている者に譲ろうと思ってます」
「赤の他人に譲るんか……」
「まだ若いけど、真面目にやってくれます。そいつなら蔵を任せても大丈夫だ」
「そんなん言うてもなあ。赤の他人やろ? まあこっちは家を出た身やから口出しはできんが……」
叔父が大きなため息をついた。
