夏。最も厳しい季節

冬を冬眠でやり過ごすクマにとって、夏は最も厳しい季節となる。新芽や草は成長して堅くなり、秋の恵みにはまだ遠い。平地にくらべてまだ柔らかい草や早い実りを求めて、7月ごろからは標高の高い場所に移動するクマが増える。ときには空腹で、動きが鈍いクマを見ることもある。登山者などによる山での目撃情報が増えるのもこの季節だ。

夏にすっかりやせてしまったヒグマ。どうやら川岸で、カラフトマスの遡上を待っているようだ(写真提供:二神慎之介)

ヤマザクラ(ツキノワグマの場合)

6月ごろになると、ツキノワグマはヤマザクラの実を食べる。種類によるが、たとえばウワミズザクラは7〜8月ごろに実がなるので、時期にはズレがある。植林されたサクラの木にも実がなれば執着するようで、公園など人間の生活圏の驚くほど近くでも執拗に現れることもある。クマダナや枝折跡が明瞭に残るので、新しい痕跡を見つけたら注意が必要だ。

フキ(ヒグマの場合)

伸びたフキの葉っぱも好んで食べるようだ。川岸などで、一帯がまるでブルドーザーが通ったかのように押し倒されているのを見ることも多い。アキタブキなどの大きなフキなら、ヒグマの身体もすっぽりと隠してしまう。こちらも見晴らしの悪い地形が多いので、見かければ近寄るべきではないだろう。

道東地方の川岸で、フキが広範囲にわたってなぎ倒されていた。渓流釣りなどでこういった痕跡を見かけたら、引き返す決断をしてほしい(写真提供:二神慎之介)

アリ

斜面のガレ場で石をひっくり返したり、道路脇などの見晴らしのよい場所で草地を掘り返したりして、盛んに舐めとるようにアリを食べる。サナギなどもまとめて食べているようだ。本州の山では、森林限界より上でも執着する様子が観察できた。6〜7月に多く見る印象だが、堅果類などが不作の年はツキノワグマでも9月まで確認している。長く依存度が高い食性だと言える。昆虫類では、ほかにハチなども食べることが知られている。