近隣の町から転居してきた女性、Hさん(70代)は、母親と愛犬を相次いで見送り、偶然見かけた「ノビシロ」に惹かれてここに来たという。

「見学に来た時、湘南の心地いい風が吹いて、アパートの2階から富士山がドーンと見えて、ここに住むしかない、と」

広告やファッション業界で長く働いてきたHさん。好きな音楽のジャンルはロックからオペラまでと幅広い。

「ここで面白いのは、思いもよらない人たちと交流できること。以前SWをしていた19歳の男の子とは、50歳も年齢差があるのに、ディープなロック話で盛り上がったり。

かと思うと、90代の男性の方から、戦時中のことや、私も知らない地元の歴史を伺うことができる。

先日その方がハンバーグの美味しい思い出のお店にまた行きたいと話していたので、SWの宮川君も誘って3人で食べに行きました」

仲良く歩く90代と20代の男性に70代の女性。3人の関係が、血縁ではないと想像できる人がいるだろうか。

それぞれ個別のワンルームで暮らしつつ、適度な距離感で助け合ったり、時におせっかいを焼いたり。「ノビシロ」は、まるで現代の長屋のようだ。

3につづく

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久田恵「〈理想のすまい〉と移住した那須の高齢者住宅を6年で退所。今は東京の自宅できままなひとり暮らし。学生時代の友人との交流を楽しみに」