きょうだいの普通の日常を見て

<『平行と垂直』はASDの兄・大貴(安田章大)とカウンセラーとして働きながら兄を支えてきた妹・希(のん)の物語です。母が亡くなった後、支え合って生きてきたきょうだいですが、希の婚約を機に2人はこれからの人生を見つめ直します>

安田さんとの対談でプロットを話した時から、安田さんは大貴役として構想にありました。後からキャスティングについて意見を出し合う中で、希役はのんさんにお願いできたら素敵だね、と話していたんです。

のんさんは、私の親しくさせていただいている小泉今日子さんが主演、演出を手掛けた2016年の舞台によく見学にいらっしゃっていて、私もその舞台の脚本を書いて、出演もしていたので、知らなくはなかったんです。そしたらのんさんは、当時の私の脚本を読んで覚えてくださっていたみたいで、今回の映画のオファーも「やります」と引き受けてくださったみたいです。すごくうれしかったですね。

安田さんは初めて会った時の印象と変わらず芝居がうまい。ASDの大貴にもスッと入っていきました。それに大貴も希も、スターが演じているようには見えない。二人で街を歩いていたら、安田章大とのんだと気づかないんじゃないかと思うくらい、オーラも消えちゃっているんです。それがすごくよかった。

障害を描いた作品って、いじめがあったり、何か特別な事件が起きたりすることが多い。でも、そうではなくて、普通にきょうだいがいて、普通に暮らして、小さな波はもちろんあるけれど、映画の後も日常が続いていく。「かわいそうな人」ではなく「普通の人」が普通に生きて、明日も明後日もあって、というのを描きたかった。

私の知人にASDの息子を持つ方がいますが、その息子さんも日常で冗談とか言うんですよ。笑うし、怒ることだってある。だってそうじゃないと、人って生きていけないですよね。ASDは本人からしたら大変かもしれない。でも彼らの特性、個性だと思うんです。

映画を作るにあたって、安田さんや小林聖太郎監督と、発達障害の支援教室に行かせていただいて、教室に通うお子さんたちともお話しました。ある男の子が「僕も映画に出してください」と監督にお願いして、ワンシーンだけその男の子が出演しています。

私が一番嫌なのは、障害を持つ人を「かわいそう」って見てしまうことだと思うんです。自分とは違う人を怖いと思うのはわかる。でもそうじゃないんだよ、と。希からしても、生まれた時からそういう個性を持ったお兄ちゃんがいるのが当たり前。だから腹も立つし、変に遠慮もしない。喧嘩も仲直りもするよ、と。そんな、どこにでもあるきょうだいの関係として、この二人を見ていただけたらと思っています。
 

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映画『平行と垂直』
2026年8月28日公開
【監督】小林聖太郎
【キャスト】安田章大/のん
伊島空/高山トモヒロ/谷村美月/福田転球/芦川誠/早織/久保田磨希
河野咲良/高田幸季/武藤凪/林英世/神野三鈴/菅原大吉
【あらすじ】
兄と妹は、まるで“平行”と“垂直”。交わらないようで、確かに支え合って立っている――。
『平行と垂直』は、自閉スペクトラム症の兄・大貴と、結婚を控えた妹・希が、人生の節目にそっと触れ合いながら、自分たちの“これから”を見つめ直す物語だ。
清掃の仕事に就き、周囲のサポートを受けながら自立した生活を送る大貴(安田章大)。カウンセラーとして働きつつ、兄を支えることを当たり前としてきた希(のん)。変わらないと思っていた日常は、希の結婚話をきっかけに静かに揺れ始める。
【公式サイト】https://www.toei-video.co.jp/heikoutosuichoku/