「普通じゃない家」で育って
中学卒業前に東京に戻り、19歳の頃には小劇場で芝居をするようになりました。でもそれでは食べていけなくて、33歳で仲間と劇団「ふくふくや」を立ち上げ、自分で脚本を書くようになったんです。誰かに脚本を頼むとお金がかかるので、だったら自分で書いてみようと思ったのがきっかけで。
最初は全然、自信なんてありませんでしたが、何とか形になって。才能があるのかないのかわからないけれど、毎回自分で脚本を書くようになりました。
もともと私は小説が好きで、年間200冊くらい読んでいた時期もあります。お金がなかったので、古本屋さんで買ったりして。漫画も好きでした。今思うと、現実から逃げたかったんでしょうね。空想というより、「もう一人の世界」があるような感覚でした。
今思えば、祖母は更年期とか、どうしようもないことで精神的に不安定だったのかもしれません。でもそんな祖母の辛さを、子どもの私は抱えきれませんでした。祖母は人生に屈託を抱えたまま65歳でこの世を去りました。
母は後に別の男性と再婚して、私の9歳下と18歳下に弟が生まれました。でも母は50歳の時にくも膜下出血で半身不随になり、75歳で亡くなるまで寝たきり生活に。再婚した父と弟たちが母を介護していて、私はたまに会いに行くくらいでした。母が死ぬのは悲しかったですが、本人は楽になったんじゃないかな、とも思って……。
脚本や小説を書くようになった今になって考えると、子どもの頃に経験したことも、全部が無駄だったわけではない。「普通じゃない家」にいたからこそ、それを脚本や物語に生かすことができたと思うんです。
子どもの頃に「こんなことがあった」って、いつまでも恨んでいてもしょうがないですよね。人にも言いづらいし、恥ずかしい。だから、家族には感謝しています。もちろん、あの頃はそんなふうに思えませんでしたけどね。
映画『平行と垂直』
2026年8月28日公開
【監督】小林聖太郎
【キャスト】安田章大/のん
伊島空/高山トモヒロ/谷村美月/福田転球/芦川誠/早織/久保田磨希
河野咲良/高田幸季/武藤凪/林英世/神野三鈴/菅原大吉
【あらすじ】
兄と妹は、まるで“平行”と“垂直”。交わらないようで、確かに支え合って立っている――。
『平行と垂直』は、自閉スペクトラム症の兄・大貴と、結婚を控えた妹・希が、人生の節目にそっと触れ合いながら、自分たちの“これから”を見つめ直す物語だ。
清掃の仕事に就き、周囲のサポートを受けながら自立した生活を送る大貴(安田章大)。カウンセラーとして働きつつ、兄を支えることを当たり前としてきた希(のん)。変わらないと思っていた日常は、希の結婚話をきっかけに静かに揺れ始める。
【公式サイト】https://www.toei-video.co.jp/heikoutosuichoku/






