虎太郎とのすれ違い

『風、薫る』場面写真
(『風、薫る』/(c)NHK)

<りんをめぐる男性のなかで、視聴者からの人気が高かったのが幼なじみ・虎太郎(小林虎之介)だ。那須で互いに意識しあっていたが、りんを追って上京した後製薬会社に勤め始めた虎太郎とはすれ違ってしまった。りんの相談相手としてシマケンがいたこともあり、以前のような親しい距離感ではなくなっていたように見える>

虎太郎は、りんの初恋の人。でも、りんが結婚して環を産んでからは、離婚もありましたし、環を育てて看護婦として生きていくために、自分が恋愛するなんていう意識は持たなくなった。それに、上京してきた虎太郎は上昇志向が強くなっていて、りんが好きだった「おっとりして優しい、朗らかな人」ではなくなっていて。那須にいた頃の虎太郎は、人と何かを比べるような人じゃなかった。「努力をすれば必ず上がっていける」と思うようになった虎太郎と、患者さんに寄り添うことを大切にするりんの間にはすれ違いが生じてしまいました。

でも、虎太郎は昔から自分を知っている人だし、信頼している気持ちは変わりません。だからこそ、変わってしまった虎太郎に、りんは歯がゆい思いをしていたんだと思います。

『風、薫る』場面写真
(『風、薫る』/(c)NHK)

<日清戦争が勃発すると、虎太郎は志願して大陸に渡り、薬を届ける仕事に就いた。しかし、戦争が終わり、りんに会いに来た虎太郎は以前のような上昇志向はなく、疲れ果てた表情を見せる。「死んでいく兵隊たちと俺、何が違うんだろう」と力なくつぶやく虎太郎。戦場で生死を分けるのは「くじ引きみたいなもの」とこぼした。りんは虎太郎に「おかえり」と優しく声をかけ、すれ違っていた2人の心が少し近づいたように見えた>

監督からは、戦争から帰ってきた虎太郎を見て、適応障害になってつらかった自分と重ねていると説明されました。虎太郎に対しては、戦争から戻ってきて「おかえりなさい」という気持ちと、昔の虎太郎がこれから戻ってくると安心しているような、そんな気持ちで向き合いました。