大切なのは自己決定

山口:治療を始める前には、長い針を刺して背中の脳脊髄液を取ったり(腰椎穿刺)、特殊な検査(アミロイドPET)を受けたりして、「脳にアミロイドがたまっていること」を証明しなきゃいけない。治療中も副作用が起きていないか確認するために何度もMRIを撮る必要がある。そして、点滴治療なので、1年半の間、2週間に1回(ドナネマブは4週間に1回)、病院に通わなければならない。ただし、レカネマブの皮下注射製剤がすでに承認申請されているので、自宅で治療の道が開けるかもしれません。

長谷川:認知症の人にとって、通院は大変ですよね。

山口:山口君としてはね、その手間と費用を、美味しいものを食べに行ったり、楽しい旅行に行ったり、運動したりすることに使うほうが、よっぽど生活の質(QOL)は上がると思うんだ。運動だけでも、進行を遅らせる効果があるっていう研究結果もちゃんと出ているしね。

宮本:私も全く同感です。

山口:もちろん「少しでも遅らせたい」と治療を希望する人がいる。大切なのは自己決定だから、それはそれで良いと思うね。

※本稿は、『認知症でも私のことは私が決める-日本の不自由とスウェーデンの自由』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

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『認知症でも私のことは私が決める-日本の不自由とスウェーデンの自由』(著:宮本礼子、長谷川佑子、山口晴保/中央公論新社)

日本では介護のために離職する人が年間10万人に上るが、スウェーデンでは家族に介護をする義務はない。

両国の違いはどこからくるのか。そして、認知症の人と家族の幸せとは……。

85~89歳の3人に1人、90歳以上の2人に1人が認知症になる時代に、認知症の医療と介護のあり方を考える。