(写真提供:Photo AC)
厚生労働省の「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」によると、認知症とMCIの有病率の合計値は約28%(2022年時点)だったそうです。日本において「認知症は恐ろしい病気である」という認識の一方、スウェーデンでは「認知症は新しい人生の始まり」と言われているようで――。そこで今回は、介護老人保健施設アートヒルズ医師・宮本礼子さん、スウェーデン王妃認定認知症専門看護師・長谷川佑子さん、群馬大学名誉教授・山口晴保さんによる著書『認知症でも私のことは私が決める-日本の不自由とスウェーデンの自由』より一部を抜粋し、認知症の医療と介護のあり方を御三方による鼎談形式でお届けします。

アルツハイマー病「新薬」の実力は?

宮本礼子:皆さんが一番モヤモヤしている「認知症の薬」について、ホンネで語り尽くそうと思います。まずは、今現場で使われている薬を、ざっくり整理してみますね。大きく分けると、この3つのグループになります。

(1)脳の働きをシャキッとさせる薬(アセチルコリンを増やすコリンエステラーゼ阻害薬:ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)

(2)脳の興奮をほどよく抑える薬(グルタミン酸NMDA受容体拮抗薬:メマンチン)

(3)脳のゴミ「アミロイドβ」を取り除く、全く新しいタイプの薬(アミロイドβ除去薬:レカネマブ、ドナネマブ)

今回は新聞やテレビで話題となっている(3)の「新薬(アミロイドβ抗体薬)」の話です。これまでの薬とは狙いが全く違います。

山口晴保:ちょっと新薬の説明をさせてね。アルツハイマー型認知症になる20~30年も前から、脳の中に「アミロイドβ」というゴミのようなタンパク質が少しずつたまり始める。これがアルツハイマー病の始まり。「認知症」ではなく、「病」の始まり。これがたまり続けると神経細胞が傷ついて認知機能が悪くなる。そこで、この「脳のゴミ」を直接取り除いてしまおうというのが新しく登場した(3)の「レカネマブ(商品名レケンビ)」や「ドナネマブ(同ケサンラ)」という薬。

長谷川佑子:つまり、原因に直接アプローチするわけですね。