世界中で「東洋の真珠」と称賛されてきた森下洋子さんは、3歳で始めたバレエを75年間続け、今も2時間以上ある全幕作品の主役を演じています。彼女がトウシューズを履き続ける理由とは――。(構成:平林理恵 撮影:宮崎貢司)
人生が大きく動き出した
これまでに2度の米国留学、その後単身ヨーロッパへ渡り、各地のバレエ団を訪ねたことで、海外のアーティストとの素晴らしい出会いもたくさんありました。
最も印象に残っているのは、子どもの頃から憧れていた英国ロイヤル・バレエ団のプリマ、マーゴ・フォンテインさんです。
稽古中にマーゴは、「ねえ、ヨーコ、言ってもいい?」なんて前置きをしてから、先生としてではなく、同じアーティストとしての目線で、「私はこう思うけど、どう?」と、気づいたことをどんどん言ってくれました。
彼女と共演できたことは、決してお金には代えられない、宝物のようなギフトです。表現者としても人間としても大きな影響を受けました。
いくつかの海外のバレエ団からは入団オファーもいただきましたが、感謝しながらも「私は日本人ですから、日本で踊ります」とお断りしました。正直に言うと、胸にガツンと来るような、「これだ!」と思わせてくれるものがなかったのです。