世界中で「東洋の真珠」と称賛されてきた森下洋子さんは、3歳で始めたバレエを75年間続け、今も2時間以上ある全幕作品の主役を演じています。彼女がトウシューズを履き続ける理由とは――。(構成:平林理恵 撮影:宮崎貢司)
すべては明日の稽古のために
いま別の稽古場でバレエ団のレッスンをしているので、ピアノの音が聴こえますね。私も朝から体を動かしていたところで、取材が終わったら練習再開です。
おかげさまで、今年も新『白鳥の湖』や新『コッペリア』などの全幕を踊っています。若い頃から、50周年は絶対に全幕作品を踊れるように体を整えていたいと思っていましたが、2001年に迎えたその節目も、今振り返れば通過点でしたね。
舞台に立つチャンスをいただけることは、本当にありがたいと感謝しています。『白鳥の湖』の舞台に初めて立ったのは15歳のときで、主人公のオデット役は1000回以上務めていますが、最近もレッスン中に「こんなにきれいな旋律があったんだ」と新たに気づいて感動しました。バレエには終わりがなく、やっていくほど新しい発見が無限にある。長く続ける素晴らしさは、ここにあるのかもしれません。
「あと何年踊りますか?」とインタビューでよく聞かれるのですが、終わりを決めたことはないんです。目指すは明日ちゃんと踊れる自分でいること、それだけを考えてきました。
私の日々はすべてバレエとともにあります。朝は7時半くらいに自然と目覚め、まず体を温めてからストレッチ。筋肉を伸ばします。それから音楽を聴きながら、朝食をほんの少し。一口サイズのベーコンエッグにレタスに、ジャムとバターをつけた小さなパン。
夫(演出・振付家の清水哲太郎さん)は、ヒヨコのごはんみたいだと笑いますが、身長150cm、体重38kgの私の体が欲している分量だけ食べるという感じですね。