「まあ、それでもミクニとモリシーが付き合ってるのさえ、分かってなかったぐらいだけどね」

 青峰は軽口で応じてみるが、ソニックはあくまでも難しい顔をしていた。彼が何を考えているのか全く分からない。

 青峰だって、初めてサカキさんの真相を知った時、複雑な感情を抱いた。恐らく、ソニックの胸中に渦巻いているのは、それと同じ感情だ。

「理由はなんだったんスか」

「理由……?」

「本当は……メグ伝が好きじゃなかったんスか?」

「違う!」

 青峰は叫んだ。

 居酒屋の喧噪の中ではすぐに掻き消されてしまうぐらいの声だったが、ソニックはハッとしたように動きを止める。

「……それだけは違うんだ。メグ伝は中学生の頃からプレイしている。新作が出るたびに発売日にプレイしてきた。だけど……」

 言葉が出て来なくなって、ビールを一口飲んだ。

「……木曜日のリモートワーク中だった。僕は特典付きのディスク版を注文してたから、午前中に荷物が届いて、十二時に退勤処理をしたらすぐにゲームを始めるつもりでいた。ところが会社から電話があった。後輩が取引先とトラブルを起こして……」

 ああ、とソニックの顔が歪んだ。会社員なら誰の身にも起こりうるありきたりなトラブルを、察してしまったらしい。

「そこから先は緊急対応だよ。僕は急遽出勤になって、後輩のフォロー。取引先に謝るのはもちろん、先方に納品したものを週末までにリテイクして提出することになった。金曜日の二十二時にようやく作業完了さ」

 青峰の目が眼精疲労でかすんでいたのは、仕事でパソコンの画面を見過ぎたからだった。

決して、大好きなゲームのせいではなかった。