自由を渇望した清治

病床の清治はもう1人の自分の幻影を見る。「みすぼらしい」と言って、幻影が近づいてくると、清治はおびえて逃げる。珠がりんごの皮をむくのに使っていた包丁を持ち、粉雪が舞う中、外に飛び出す。商店街で暴れ回り、「まだ逝ってたまるか」と叫ぶ。その様子を見ていた珠が、清治の前に立ちはだかった。清治は珠を抱きしめて「死にとうない」とつぶやいた。それからしばらくして、清治は死去した。

自分を貫いていく珠に大きな影響を与えた清治もまた、自由を求める人物だった。史実では宇野千代の父は次男だったが、劇中では清治は長男に変更されている。

宇野千代へのリスペクトはありつつ、「あくまでオリジナルドラマなので、今の視聴者にどう響くか考え、清治のエピソードを作りました」と明かす。当時は家父長制であり、長男優位主義の時代。「もちろん長男で嫡男であることで幸せな人もいるかもしれないけれど、そうじゃない人もいた。自由を渇望していたのが清治という存在です。社会で与えられた役割に甘んじる人が大半の中で、清治は自分勝手に思われてもいいから自由を実現したかった」と語る。

(『ブラッサム』/(c)NHK)

清治の幻影が登場するという演出について、「清治の中にある、もう1人のなりたかった自分を最後に表出させる形にしました。清治の中にある何かがこぼれ落ちていくのを、渡部さんには見事に演じていただきました」と語る。

史実では宇野千代の父は大雪の日に亡くなったとされているが、劇中では粉雪の舞う季節に変更した。

「雪の中でそのまま倒れてしまう清治は悲しい。清治が亡くなった後に、家族がその死を受け止めて次に向かっていくために、春に近い時期の雪のようにしたいと考えました」