明治から平成まで激動の時代を駆け抜け、自由を求め続けた作家・宇野千代(1897~1996)をモデルとした連続テレビ小説『ブラッサム』(総合、月~金午前8時~ほか)。主人公の葉野珠を演じているのが石橋静河だ。これまで、絶対的な存在だった父・清治の影響、継母リョウとの信頼関係が丁寧に描かれ、弟妹のためにお話を作ったり、級友と同人誌を執筆したりと文学者としての珠の才能が感じられるエピソードを積み重ねてきた。10月9日放送の第10回で清治が死去。父から解放された珠は、自分の人生に向き合っていく。制作統括の村山峻平さんに『ブラッサム』制作の裏側を聞いた。(取材・文:婦人公論.jp編集部 油原聡子)
渡部篤郎の存在感
放送スタート以来、注目されてきたのが珠の父・清治(渡部篤郎)だ。家督を足の悪い弟の清重に譲った引き換えに、毎月本家からの仕送りをもらって生活している。家族に怒鳴り散らし、自身が可愛がっているカナリアのために、幼い娘に雨の中をはだしで餌を買いに行かせる。町の人から「放蕩無頼」と言われ変わり者の扱いの清治だが、どこか鬱屈としたものを抱え、孤高の存在にも見える。
「清治役として最初に思い浮かんだのが渡部さんでした。僕が子どもの頃に観ていた作品によく出演されていました。年を重ねた今の渡部さんが清治を演じたら、いいようのない味が出るのではないかと思いました」と起用背景を明かす。
(『ブラッサム』/(c)NHK)
清治の初登場シーンは第1回、馬に乗り街中を駆ける場面だった。「あんなに簡単に馬に乗る人は初めて見ました。まるで自転車に乗っているようでした」と驚く。渡部さんにとって久しぶりの乗馬シーンだったが、「練習はいらないよ。ちょっと乗ったらわかるから」と話していたという。実際に馬術指導担当者から見ても問題なく、すぐに本番の撮影になった。
「台本に書いてあって役として必要なことだからやっています、という感じで、そのプロフェッショナルさがすごく素敵でした」と振り返る。
渡部さんの素顔は、清治とは正反対。「とても優しくて、いい兄貴分」だという。病床の清治に対して、息子の守がつかみかかる場面では、子役のフォローをしていたという。
「序盤の出演だったので、渡部さんが撮影の一体感みたいなものを作ってくださって。渡部さんのために1カット1カットいい絵を撮ろうという気持ちが生まれていました」