過度な情報社会に不信感を抱いて

呉勝浩さん(撮影:米田育広)

作品を書くときには、自分の中に社会に対する何らかの違和感やモヤモヤを抱えていることが多いですね。

今回の作品の場合は、ひとことで言えば、今日の過度な情報社会に対する不信感が執筆のモチベーションになっています。たとえば、数時間に及ぶ国会答弁の中のほんの1場面だけが切り取られて、「ひどいことを言っている!」と拡散されていく。ネットでその切り取りを見た人は、それが真実だと思うかもしれないけれど、果たしてそうなのだろうか?と。

でも、だからと言って、誰もが何時間にも及ぶ国会答弁のすべてをチェックするわけにはいかないでしょう。そうした情報社会に対する危うさや不信感を、今回、主人公の根元彰良が書いているルポの内容と重ねてみました。

もうひとつ、今回の作中にも出てきますが、「自分の言葉に呪われる」という言葉がひとつのモチーフになっています。たとえば、「そんなこと、公に言っちゃって大丈夫?」「そんな強い言葉で発信したら、呪われちゃうよ」という、僕自身がSNSに対して感じている気持ち悪さも、この作品の裏テーマになっています。ノンフィクション作家である根元が「面白くなければダメなんだ」と言っていますが、それもやっぱり呪いの言葉で。「それってルポを書いている人間として正当なの?」という疑問が僕自身の中にも常にあるんです。