直感で決めた後にロケハン
今回の『蒼羽さん事件』は埼玉県の日高市や川越市、都内の池袋などを物語の舞台にしています。僕は関西在住なので、正直な話、場所選びは実に適当なんですよ(笑)。意味を持って選ぼうとすると責任が生じてしまうので、なるべくランダムに選びたいという思いがあって。
グーグルマップでなんとなくアタリをつけた場所を上空から見て、「この地形、面白い」「この地名、面白い」といった直感で。東京在住の方に「『爆弾』の舞台に野方(のがた)を選んだのは絶妙なチョイスだね」と言われても、何が絶妙なのか、自分ではまったくわかっていない(笑)。ただ、その直感がそれほど大きく外れたことがないというのが密かな自慢です。
今回の物語の核となる姉妹の家がある場所を埼玉県の日高市に決めたのも、ある意味、直感でしたが、姉と妹がそれぞれに通っている高校の所在地を川越に決めたのは、2つの高校が駅前のごく近い場所にあることを知ったから。「彼女たちがここに通っていたら面白そうだな」と、ピンと来て。そんなひらめきから、毎回、舞台の場所を決めていくんです。
とはいえ、選んだ以上、1度はその土地に必ず足を運ぶようにしています。作家には大きく分けて2パターンあって、文章を書くときに頭の中に映像が浮かぶ人と浮かばない人がいる。学生時代に映画監督を目指していたことと関係しているのかどうかはわかりませんが、僕は映像が浮かばないと小説を書くのが難しいタイプ。だから、現地の様子をやっぱり自分の目で確かめたいんですね。
もちろん、川越にもロケハンに行きました。駅前にあるホテルに泊まり、被害者となった遠野青葉や姉の四葉が通っていた高校のモデルにしたところにも実際に足を運んで。とはいえ、四葉が通っていたのは女子高なので、僕みたいな中年のオッサンが学校の周りをウロウロしていたらヤバイでしょう(笑)。「変質者に思われたら、たまったもんじゃねぇ」という根元の言葉どおりで。
また、その学校は駅の目の前にあるのに、正門にたどり着くには10~15分ほど歩かなきゃならない。自分の足で実際に歩いてみたその感覚が、今回書きたい小説の輪郭になったと言いますか。遠野家の姉妹に対する根元の距離感のような。目の前にいるのだけれど、遠回りしてもなかなかたどり着けないという感覚。そんな自分が体験した思いの数々を、主人公の根元に投影していきました。