私だったら……
「私だったら……」いま私があなたのご参考に言えるのは、それだけです。
私だったら――ひとまず別居をするでしょう。夫が何と言っても。二つの心をもつ人と夫婦生活をすることに耐えられないほど、その人を愛しているからです。あわないことで、自分の心をゆっくり静かに落ち着かせます。
時がたって、その人への愛がすっかり冷え切ってしまったら、はっきり離婚します。不幸な将来を送る子供たちへの母としての心づかいも、その時にならなければ、十分につくせないでしょう。
今のあなたの心は、まだ愛と憎しみの間をゆれ動いているように思えますから。ご主人の心を決めるためにも、その別居は必要だと、私は思うのですが。
(「毎日新聞」1969年11月21日)
※本稿は、『わたしの人生案内』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『わたしの人生案内』(著:沢村貞子/中央公論新社)
恋愛・結婚、人間関係、介護、死別、生きがいについて……随筆家としても知られる名脇役の下にさまざまな悩みが寄せられた。
ときに厳しくも機微にふれる回答には、二度の離婚と三度の結婚を経て、人生の裏表を知った著者の濃やかな優しさがにじむ。
初書籍化となる新聞連載の人生相談83篇に、女性の生き方をめぐる随筆を併せた一冊。





