(写真提供:Photo AC)
名脇役女優としてテレビや映画、舞台で活躍された一方、エッセイストとしても知られた沢村貞子さん。そんな沢村さんが1966~1983年の間、新聞の人生相談に寄せられるさまざまな悩みに回答した83篇をまとめた書籍が刊行されました。そこで今回は書籍『わたしの人生案内』より一部を抜粋し、人間関係や夫との不和に悩む昭和の女性たちに送った言葉をご紹介します。

愛人と別れない夫に心が冷えています

相談

結婚して17年。40歳、2児の母です。主人は独力で現在の会社をつくり10年余り。やっと世間の信用も出来、生活も安定してきたところです。1年前に主人の口から愛人のいることを打ち明けられました。その女性は主人の会社の事務員で28歳になりますが、2回も中絶しております。なかなか私と離婚しそうにもない主人の態度に怒り、一度退職したとのことですが、最近復職しております。

こんな主人なのですが、外泊もせず、ときどき会社の仕事で遅くなることはあっても、やさしい夫であり、父なのです。一時は怒り、泣き、主人と派手な争いを繰り返したものですが、現在の私は、彼女が復職した、という事実を、あたかも知らぬことのようによそおっているのです。表面はなごやかに振る舞い、時には甘え、ふざけ、そして一人になった時には、本当に鬼ではないかと、自分で恐ろしくなるほど、うらみとも、憎しみとも、怒りともいえないものが、心の中で荒れ狂うのです。

ただの浮気だったら、ある時期が来ればさめるはず。しかし、一度出て行った人間をまた呼び戻したことを知ったいま、自分ではどうすることも出来ないくらい、心が冷えていくのです。中学の長男は父親が大好きです。離婚となれば下の子は私につくでしょう。子供の将来を考えると悩むばかりです。

東京都・夫の浮気に悩む妻