出版社の担当の皆さんに死去の事実と公表の段取りについてお伝えした時…
100万部突破の『九十歳。何がめでたい』(2016年、小学館)をはじめ、ユーモアエッセイで長く人気を博した作家の佐藤愛子さん。家族からみた佐藤愛子さんの姿とは。孫の杉山桃子さんがコミックとエッセイで描く『婦人公論』の連載「うちのばあさん102歳」。第20回目は「葬式・そのあと」。
※去る4月29日、佐藤愛子さんが102歳で逝去されました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

葬式・そのあと

葬儀等の手続きもなかなかのハイカロリーな仕事であったが、地味にしんどかったのが箝口令(かんこうれい)である。

祖母が亡くなってから2週間、我々は極近しい人にのみそのことを伝え、あとは親しい知人が来ようが仕事の話が来ようが誤魔化し続けた。「なんか疲れてるね」と声をかけられる度に私はヘラヘラした。
 

知人が相手の時はまだいいのだ。滑りそうになる口を押さえていればいいのだから。それよりも仕事の話が参った。

本の帯に「祝・103歳」と表記したいとか、現在の様子を教えてくれとか言われて、私はどう答えていいやらわからず仕事相手にもヘラヘラするしかなかった。

例に漏れずこの連載にも影響は及んでいる。祖母が「死んだことは極力知らせるな」と言った時、よもや自分の孫が自分のことを雑誌に連載しているとは思わなかったのだろう。

いや、仮に思っていたとしても箝口令は敷いたのだろうが。