僕流の嫉妬めいた観察
燕楽軒では、滝田樗陰(たきたちょいん)氏や、今東光(こんとうこう)君が、矢っ張り彼女の知り合いだった。思えば不思議な気がする。…併し、僕流の嫉妬めいた観察を敢てすれば、一番ひそかに、彼女の心を惹いたのは、又尊敬していたのは、芥川龍之介だったかも知れない。間違っていたら、お二人とも御勘弁。
それっきり宇野さんは、北海道へとか去った。そして二、三年、全くどうしたか知らなかった。ところが、或る年時事新報が賞を懸けて、短篇を募った時、私が選者で一等に当選したのが、彼女だった。
姓は藤村(ふじむら)と変っていたので、ちっとも知らなかった。後であの人だと聞かせられても、まだ暫(しば)らくは信じなかった。が、ほんとにそうだと分った時、不思議な気がした。
不思議な縁、――と云って縁と云う程ではないかも知れないが、――そう云った感じに似たものが、今の藤村さんと私との間には、在っただけだ。