目に見えない力に背中を押されて
都内から山梨へ移住して素敵に暮らしている人がたくさんいることは知っていたので、都会を離れた暮らしが嫌だというわけではなかったのです。
嫌だったのは母の介護をすることでした。
でも尊敬する先輩から「お母さんの介護をしなければ絶対に後悔するわよ」とアドバイスを受けたのに続いて、山梨の家は母の介護をするのに最適であることがわかるなんて。この流れに抗うことはできないのではないかと考え始めていました。
第一、その頃になると悩んだり、迷ったりすること自体に疲れ果てていたのです。
どういう結論を出すにせよ、早く決着をつけたい、そうでなければ身が持たない、と追いつめられていた私。かくなるうえはと手にしたのは、お誕生日に友達からもらった「エンジェルカード」でした。
スピリチュアルな世界が好きな人のあいだで有名なエンジェルカードは、選んだカードを通して天からのメッセージを受け取るというものです。
半信半疑だった私が人生の一大事を決めるのにエンジェルカードを使う日が来るとは思っていませんでしたが、藁にもすがる思いとはこのこと。自分では決断がつかないのだから天に委ねた、なんていうと大袈裟ですけれど、「この状況から離れなさい」といったメッセージのカードを引いたら、潔くそれに従うつもりでした。
つまり、私が知りたかったのは、母にとってどうかではなく、どうすることが自分自身にとってよいことなのか、だったのです。
私は心の中で「山梨へ引っ越すべきなのでしょうか?」と問いかけながらカードを丁寧にシャッフルして一枚を選びました。
すると「ムービング(引っ越し)」とメッセージの書かれたカードだったので「えー」と小さく叫んで、受け入れがたいと却下。
気を取り直してもう一度、カードを丁寧にシャッフルして、今度は隣に座っていた母にカードを引いてもらいました。
するとまたもや「ムービング」という同じカードだったのです。
カードは44枚もあるのに、こんなことってある? と怖くなったほどでした。
こうなったら占いにも頼ろうと、方位鑑定のサイトで調べてみたら、私も母も山梨の方角が吉。
これはもう抗えない、目に見えない力で背中を押されているのだと受け止めて、ついに観念したのです。
※本稿は、『今だから笑える 笑えない介護の話』(小学館)の一部を再編集したものです。
『今だから笑える 笑えない介護の話』(著:岡田美里/小学館)
わがまま母とふたり、知識ゼロの介護スタート。
岡田美里が率直に綴る、母を看取るまで7年間の体験談。





