今も「正」の字を心に刻み続けている
エホバの証人だった母のもとで、日々「正」の字でその日の採点をされて過ごした幼少期を思い出す。善い行いをすれば加点されて褒められ、悪い行いをすれば減点されて罰を与えられる毎日だった。
そしてそれは漠然と、ハルマゲドンで世界が滅びるときに、自分だけが生き残れないという恐ろしいイメージにも繋がっていた。
この頑張りは母が喜んでくれるだろうか? これならどうだろう?
いつでも頑張らないといけない。もっともっと頑張り続けなければ、母から愛されないのだ。そうしないと存在していてはいけない。誰からも愛されず、世界からも見捨てられてしまうのだ。
常に周りの顔色を窺い、頑張りをみせていないと息ができなかった。
大人になった今、母も、周りの誰も、私のことを採点なんてしていない。
それなのに、私はいまだに一人で見えない「正」の字を心に刻み続けてしまっている。
何かしている時だけかろうじて自分を許せる。書いている、働いている、誰かの役に立っている時。しかし、その活動が止まった途端「あ、また何もしてない」と自分で減点してしまうのだ。
映画のPRの仕事も、スギ薬局ではない誰かからのLINEも、「誰かに必要とされている」という加点ポイントにしてしまっているのかもしれない。
ああ……もういいかげん、疲れた。頑張るの、やめたい。
湯船で大きなため息をついた。
「はぁーーーあ!!」
