いつも手をつないで杖の代わりになってくれる

秀樹 僕は倒れてすぐの頃、散歩中、「リハビリですか」と人に声をかけられると、「放っておいてよ」と思っていた。今は、「あなたも脳梗塞ですか。一緒に歩きますか」と自分から声をかけられるようになってね。そんなことが嬉しかったりする。リハビリも、このあいだまでできなかったことができるようになると胸が弾む。ハードルは低いかもしれないけど、その高さが徐々に上がっていく喜びというのかな。「できた」「ありがとう」と、毎日感謝の気持ちが湧き上がってくるんだよね。

昌子 私も、落ち込んでいたとき、家族や会社の人たちが常にそばにいて支えてくれたなあって、今は感謝でいっぱいなんです。

秀樹 家族の存在は大きいね。うちの子どもたちも彼らなりに僕を気づかってくれて、風呂で背中を流してくれたりするの。ああ、こんな幸せもあるんだと……。最初に倒れたとき、カミさんは2人目の子を妊娠中。再発もあって、つらい思いをさせっぱなしだよ。「ゴメンね、迷惑かけて」と言うと、「そんなことないわよ」と楽しそうに子どもと僕の世話をしてくれている。僕と歩くときには、いつも手をつないで杖の代わりになってくれるしね。好きで病気になったわけじゃないけれど、小さな幸せをいっぱい気づかせてくれたのもまた、病気なんだよね。

昌子 病気や苦しみの渦中にあるときは、この先もずっと暗闇に閉ざされたままのような気がするものですが、出口のないトンネルはないんですよね。私自身、今、こうして笑顔でいられるんですから。ずっと応援してくれているファンの方たちの声にはとても励まされました。

秀樹 僕は、同じ病気だという年輩の方から手紙をいただくことが増えたの。僕の姿を見て元気づけられていると言われると、「よし、頑張らなきゃ」と、こっちが励まされる。

昌子 あらためて歌手でよかったなあと思うんです。震災後、被災地に行きました。私に力仕事はできないけど、歌うことだけはできる。歌を聴いていただいているあいだ、みなさんに少しでも笑顔になってもらえたら、私も幸せ。これまでつらい時期もあったけれど、それだけに今、歌うことは本当に楽しい。歌こそ私の使命だと思ってます。

秀樹 「うまく歌おう」ではなく、「伝えよう」という気持ちだよね。僕も昌子ちゃんも、病気に苦しんだ経験があるからこそ歌える歌があると思う。

昌子 「うまい」と言われるより、「心に沁みた」と言われたいですね。

秀樹 大きい舞台や、華やかなパフォーマンスのステージもあるけれど、一方で、隣にいる人に寄り添うように、囁くように……そんなふうにも歌っていきたい。「こうしなきゃ」「ああしなきゃ」と無理に決めつけず、昌子ちゃんも、自分でやりたいと思ったことをやればいいと思うよ。せっかくこうして生きているんだもの。

昌子 一日一日を大切にして、笑顔で明るく生きていかないと、ほんと、バチが当たりますね。きょうは秀樹さんといろいろなお話ができて、昌子、カンゲキ!(笑)

 


西城秀樹、初のオールタイムシングル集、5月16日発売!

全87曲のシングル、貴重な未発表音源などを収録した『HIDEKI UNFORGETTABLE HIDEKI SAIJO ALL TIME SINGLES SINCE1972』が発売されます。スーパースター西城秀樹の軌跡がここに。

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