「僕がお金に翻弄されて学んだことは、『人生は行動を起こせば何かが変わる』ということと、『つらいときこそ逃げない』ということ。」

執着心を手放し前を向いて

まさにゼロからの再スタートです。僕はまず、事務所から独立しよう、と考えました。個人事務所を設立して、なんでも自分でやってみよう、と。実行に移したところ、田原俊彦さんと再会するという企画のオファーがバラエティ番組から来たのです。

仕事を選んでいる場合ではないと引き受けたら、番組を見ていたテレビ局のプロデューサーからドラマ日曜劇場『とんび』(13年)への出演オファーをいただきました。そして、このドラマで頭を丸めて挑んだ僧侶の役が、役者としてのターニングポイントになりました。

個人事務所を設立したことで、これまで以上に仕事の流れや、自分に求められているものを理解するようになりました。お金に関してもそうです。ギャラがいくらか、自分できちんと把握していますし、お金の管理も徹底しています。もう、誰かに通帳を預けるなんておそろしいことはしません。(笑)

角川映画のオーディションを受けなければ、そして個人事務所を立ち上げていなければ、今の僕はなかった。行動を起こすと、人との出会いが生まれます。人との出会いから新たな仕事が生まれ、自分が助けられたりする。

友達に借金を踏み倒された後、正直、「あの金さえあれば」と貸したお金に執着していた時期もありました。でもそれでは悪縁を断ち切れない。僕は人のせいにするのをやめ、「不義理する人を見抜けなかった自分のせいだ」「お金を貸した自分が悪いのだ」と考えを改めることで執着心を手放し、前を向くことができた。

お金に苦しんだ30代後半から40代まで、本当につらかったけれど、僕は人生を断つことだけは考えませんでした。それは、自分が行動を起こすことによって出会ったいい友人に支えられたから、そして「つらいときこそ逃げない」と自分に言い聞かせていたからです。あきらめなければ、きっと道が見つかる。

幸い、今は俳優としてのオファーも増え、若いときには思いもよらなかったさまざまな役をいただいて、毎日が充実しています。50歳で今の妻と再婚し、子宝にも恵まれました。

今、僕は豪邸にも高級車にも関心がありません。経験したからということもあると思いますが、何よりも今の家族を守りたいという気持ちが強いのです。

目下の最大のテーマは「老後にどう備えるか」。でも結局のところ、目の前にある仕事をきちんとこなすことが大切なのだと思います。あとは節約でしょうか。物質的には質素ですが、家族であれこれと吟味するのが楽しくて、精神的には満たされています。今さらですが、地に足のついた暮らしができるのはありがたいことですね。