友人からのハガキはいつも外国旅行や温泉への旅の思い出をつづったものばかり。私だってたまには旅行をしたい。そして「温泉で羽を伸ばし、旅先でいい男に出会ったわ」とつづるのだ。

旅の記録がまとまったら、出版社に持ち込もう。それを本にしたらスゴク売れて金がわんさか入ってきたりして。そしたらまたみんなを集めてさらに盛大なお茶会をする。高価なカップに馥郁とした紅茶を。

集まった人たちが「やっと貴女はデビューしたのね!」と涙ぐむ。私は今まで苦労を重ねたことはおくびにも出さず、悠然と微笑むのだ。「ありがとう」とみんなのテーブルを回り、「お代わりはいかが?」と優雅に振る舞う。

となれば、この狭い部屋でなく、どこかのマンションにでも移ろうかしら……と思案にくれる。

しかし現実は厳しい。

私も齢76、もうじき喜寿だ。貯金も底をつきかけている。この歳でパートの仕事をもち、1日3時間、月に5万円くらいの収入がある。でも年金とその5万円では、やっとの生活だ。そのうちパートも打ち切られるかもしれない。

どうにか私が元気なうちに夫に逝ってもらいたいのが本音だ。そうとも知らずあの人は気そうな顔をして自分でスーパーまで行き、買ってきたお寿司をパクついている。私は夕べの残りの冷や飯に湯をかけてお茶漬けの予定だというのに。それにしてもなんとさみしい予定だろうか。

それでも私は一人暮らしを諦めぬ。どっちかが先に逝くのであれば、私ではないはずだから。諦めずに体を鍛えて生きてゆく。


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