2005年の母の日、広瀬さんは佐野さんに携帯電話を贈った。「使い方を教えて」と言わない母に、あえて無関心を装う(写真提供:オフィス・ジロチョー)

「もう来ないでくれ」って言ったら

そんな自分の都合で愛情を注いでくる母親が息苦しくて、17歳で一人暮らしをはじめました。あの人は、最初、大反対をしていたのですが、最後には許してくれました。それなのに、あの人、僕がいるところに来ちゃうんですよ。

たとえば、青山に住んでいたとき。あの人の友だちのデザイン事務所が近所にあったので、「ちょっと、仕事をさせてくれないか」とか言って、自宅のある多摩から、わざわざ友だちのところに来たりするんです。僕の住む家に直接来ないところが、またちょっと、アレでしょう。意地っ張りなあの人らしいというか。

若いころだけじゃないんです。僕が30歳を過ぎた、いいおじさんになっても扱いは変わりませんでした。当時、あの人はこの北軽井沢の別荘を住居兼仕事場にしていたんです。多摩にある実家は誰も住まなくなってもったいないから、僕が暮らすことにすると、しょっちゅう遊びに来ちゃう。こっちは、距離をおきたくて家を出ているわけで、当然邪険にしますよね。「もう来ないでくれ」って言ったら、周囲の人に「弦に自分の家を追い出された」と大騒ぎ。周りから「お母さんが、かわいそうだ」とか言われて、こっちはいい迷惑です。

周囲の人を巻き込んだり、使ったりするのがうまいから、またずるいんですよ。けんかをして、しばらく連絡をとらないと、あの人の友だちに「淋しがっているから、電話してあげたら」「たまには顔を出してあげなよ」と言われる。だからといって、僕から電話をしたり、顔を見に行ったりすることはしないんですけど。

これが恋愛だったら、「はい、さようなら」って別れておしまいだけれど、親だからそうはいかないじゃないですか。そこがツライところですよね。