見たくありませんから、弱った姿なんて
きっと多くの人は、親が老いて弱っていき、認知症などで変わっていく姿を目にしたり、介護の必要に迫られたりして、苦労するんだと思います。うちの場合、最後まで、わがままで、意地っ張りなままだった。あの人らしく、いばりながら死んでいきました。それは、本当にありがたかったですね。やっぱり見たくありませんから、弱った姿なんて。
だからかな、あの人が死んだとき、「悲しい」とか「淋しい」とか思わなかったんですよ。ちょっと不謹慎かもしれないけれど、晴れ晴れした。オヤジとあの人が同時期にがんになって、とにかく忙しかったことが原因だったのか、僕はうつになって薬を飲んでいたのに、あの人と一緒にうつが消えてなくなったんです。これで、あの人から解放されて自分だけの人生を送れると思ったら、翼が生えたみたいに自由を感じた。それは、もうすぐ没後5年を迎える今も、変わっていません。
親は親の、子どもは子どもの役割をまっとうし続けることって難しいけれど、必要なことだと思うんです。病気になった親を見て、急に僕が優しくなったり、へんに心配したりしたら、「あれ、もしかしたら自分は、子どもに年とったな、弱ってきたなと思われているかもしれない」とあの人が感じる可能性があります。それは、ちょっと違うんじゃないかなと思っていたんです。
だから、老いようが、がんになろうが、おふくろと僕の関係性を変えないようにしていました。と言っても、あの人の言葉にイラッとしたら言い返して、余計な心配はせず、言いたいことを言わせ、自分のやりたいようにやらせていただけなんですけどね。だって、佐野洋子は佐野洋子ですから。(笑)
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